メサイアコンプレックスとは罪悪感、劣等感、無価値観、低い自己肯定感などによって人を救うことで自分に価値を感じたり罪悪感を払しょくしようという心理状態です。
メサイアとは救世主のことで、メシアコンプレックスと言うこともあります。
- 相手の役に立てなくてひどく落ち込む
- 相手のためにやっているのにそっけない態度を取られると猛烈に腹が立つ
- 相手のためになるなら自分を犠牲にすることも厭わない
などの気持ちが強いと、もしかしたら自分の罪悪感や無価値観を他人の役に立つことによって補おうと考えているのかもしれません。
その心の状態はとても苦しく、相手の役に立とうと思ってもうまくいきません。
この記事では、メサイアコンプレックスについてさらにその心理を深掘っていくと共にどうしたらメサイアコンプレックスを根本から解消していけるのかついて話をしていきます。
誰かの役に立つことで自分という存在にOKを出すのではなく、何もない自分にOKが出せるようになることで圧倒的に満たされた気持ちで幸せな毎日を過ごしてもらえたらと思います。
1.メサイアコンプレックスの仕組み
冒頭でも少し触れましたが、メサイアコンプレックスの仕組みについてさらに深く説明していこうと思います。
そもそもの話、誰かの役に立つと嬉しいと感じることはとても自然なことです。
相手が喜んでくれたことが単純に嬉しかったりそれで相手を大事だという感覚が自分の中で広がったり、それが自分の自信になったり。
そういった感覚を持つこととメサイアコンプレックスであることとは全く別の話になります。
メサイアコンプレックスとは、自分の”不足”や”欠乏”を補うという目的のために「相手の役に立つ」という方法を使おうとしている心理状態です。
この目的の部分は無意識であることも多いです。
何もしない自分では、価値がなく劣っていて罪の意識があり、そんな自分ではいけない。
だから、誰かの役に立つことや誰かを救うことによって、自分に価値があることを実感し劣っているという感覚を回避し自分がOKであることを感じたいということです。
だから、人の役に立つことに執着しそこから離れることができません。
そして、人の役に立っていない自分を発見するたびに自分がOKなことも自分に価値があることも感じることできず苦しく感じます。
2.メサイアコンプレックスを抱えたまま人を救おうとすると
だから、メサイアコンプレックスを抱えた人が人を救える職業を選ぶことも多いです。
私は心理カウンセラーをしていますが、メサイアコンプレックスを抱えたまま心理カウンセラーをやっている方も少なくないです。
そして、メサイアコンプレックスを抱えたまま人の役に立てる仕事を選んだ場合、提供する側も受ける側も苦しくなっていきます。
2-1.役に立っていることを実感し続けたいから相手に依存させる
メサイアコンプレックスとは役に立つ実感を得ることで自分を保とうとしているということです。
表現を変えると自分を保つためにいつでも役に立っている実感を得ていたいということです。
この「いつでも役に立つ実感を得ている」という状態を維持するには誰かに依存してもらうことが好都合になります。
相手が独り立ちして自立して生きていけるようになるよりも、自分で独り立ちできずいつも自分に頼ってくれている方が自分は「役に立っている感」を感じることができます。
心理カウンセラーを例にすると、相手が心の根本を整えて幸せに生きていけるようになることよりも、いつも悩みを持っている状態の方が役に立てている感を感じられるため、ずっと悩んでもらうという状態を選択します。
共依存関係ということですね。
この状態でクライアントは楽に幸せになっていけないし、カウンセラー側も頼られている感は感じられるもののいつまで経ってもクライアントが苦しいままなためいずれは罪悪感や無価値観、自分はダメだという感覚を目の当たりにして苦しくなります。
怖いのは、こういったことが無意識レベルで起きているということですね。
2-2.相手の幸せよりも自分の確認欲求を優先する
また、人には「確認欲求」という欲求が存在します。
確認欲求とは自分がこうだと思っていることを「やっぱり」と確認したい欲求です。
人は誰しも自分に対する認識を持っています。
- 自分はできる人だ
- 自分はおっちょこちょいだ
- 自分は怒りっぽい人だ
実は、我々はこの認識を確認するように毎日の生活を送っています。
そして、自分の認識を確認できた瞬間に「やっぱり」と合点がいきスッキリした気持ちになります。
(それが自分にとって嫌な確認であっても、確認できたというスッキリ感を得るのことができます)
できるまで仕事を頑張ったり、おっちょこちょいを確認できるようにしっかり者と付き合ったり、自分を怒らせる人とわざわざ付き合ったりするのもそのためです。
あなたも友達に対して「何であんな彼氏とずっと付き合っているんだろう」「そんなに嫌なら会社辞めたらいいじゃん」と不思議に感じたことがあると思います。
これもその人が自分の確認欲求を満たしている可能性があります。
では、メサイアコンプレックスの人が抱く自分に対する認識とは何かというと下記です。
- 自分には価値がない
- 自分は劣っている
- 自分には罪がある
- 自分はダメだ
すると、目の前の人を使って、自分に価値がないことや劣っていること、罪があること、自分はダメな存在であることを無意識レベルで確認しようとするのです。
心理カウンセラーを例にすると、「目の前の人を救えないことで自分に価値がないことを確認する」という感じです。
この確認をするために、クライアントには楽になってもらっては困るわけです。
3.自分を救えないのに相手を救えるわけがない
だから、もし自分がメサイアコンプレックスかもなと感じるのであれば、ぜひ、人を救うことも人の役に立つことも一旦やめてみてください。
相手も自分も苦しくさせるだけですから。
少し厳しい言い方になるかもしれませんが、相手はあなたが救われるための道具ではないということです。
自分の自己満足のために相手を巻き込まないでください。
自分を救えない人が相手を救えるわけがない。
自分を幸せにできない人が本当の意味で相手を幸せにできるわけがない。
だから、私が開催しているカウンセラー養成コースでは、カウンセリングのスキルや知識よりも自分を楽に幸せにしていくことをとても重視しています。
自分を楽に幸せにできたら、相手のことは客観的に見られる分、どうすれば楽に幸せになっていくかが簡単に分かります。
自分を楽に幸せにすることが最優先であることを覚えておいてください。
また、自分が救われることや自分が楽になることに、相手を救うことや相手の役に立つことは必要じゃないということです。
一時的な安心感を得るために自分の人生全てを捧げるのではなく、根本的に楽で幸せになる生き方を腑に落としてもらえたらと思います。
4.メサイアコンプレックスを解消する
では、根本的に楽に幸せになっていくにはどうしたらいいのかについてここから話をしていきます。
このサイトではその場しのぎではなく根本から悩みを解消する話しか書いてないので、「このサイトをくまなく読んでください」と言うことなのですが、悩みの概要だけ紹介しますね。
まず、全ての苦しさを作るのは「こうするべき」という自分が守っているルールによって生まれます。
本当は自由に自分らしく生きたいし、そう生きられたら楽で自由で自己肯定感も上がるけど、「他人には優しくするべきだから優しくしなくては」「こんなこと言ったら嫌われそうだから思っていることは言うべきではない」「どんなに辛くても仕事は頑張るべき」など、そのルールが自分を苦しめています。
色んな精神疾患も先天的なものでない場合は、この「こうするべき」というルールを必死に守って自分の心をすり減らしているから生まれるものです。
そして、この「こうするべき」というルールは、劣等感や罪悪感、無価値観や自己認識、自分への暗示(法則)によって支えられています。
- 自分は劣っていてその感覚を味わいたくないから必死に頑張るし、頑張らなければいけない(劣等感)
- 自分には元々罪があるからその罪を償うために人の役に立たなければ(罪悪感)
- なにもしていない自分には価値がないから何かを付加価値を付け加えなければ(無価値観)
- 自分はダメな奴だから少しでもマシな自分にならなければ(自己認識)
- 空気を読まないと嫌われるから空気を読まなければ(自分への暗示/法則)
そして、「こうするべき」や劣等感・罪悪感などなどは過去の傷ついた出来事によって作られました。
この過去の傷ついた出来事がまだ癒えていない状態だと、「こうするべき」や劣等感・罪悪感などを手放すことにとても心理的な抵抗を感じます。
だから、楽になっていくには「こうするべき」を外していけばいいということなのですが、この「こうするべき」を外していくために、劣等感や罪悪感など「こうするべき」に紐づいているものを外していくし、さらに過去の傷ついた出来事がまだ疼く場合は過去の出来事から癒していくということになります。
こういったアプローチを適切に踏んでいくだけで世界が180°変わったかのように楽に自由に生きられるようになります。
そこに「自分が救われるために他人を救う」なんてアプローチは一切必要ないんです。
逆に、仮に他人を救えたところであなたの悩みや苦しさは解消することはありません。
ただただ、やるべきことをやる。
ただただ、自分と向き合う。
それだけで、あなたが今まで人生をかけて払しょくしたかった苦しさや心の飢え、不足感、孤独感、ここに存在してはいけないような感覚は解消していきます。
ぜひ、やるべきことをやっていってくださいね。
それぞれ、どうしたら解消していくのかについてはリンク先を参考にしてください。
■こうするべきを捨てる
他人にイライラする理由とイライラを自然と解消する「こうするべき」の捨て方
■劣等感
「頭が悪い」劣等感を解消する方法、欠点との付き合い方
■罪悪感
幸せへの足かせとなる罪悪感の外し方
■無価値観
気にしない方法はない!自然と気にならなくなる心の根本へのアプローチ
※無価値観の項目を読んでみてください
■自己認識
楽になりたい!楽に生きるための3つのアプローチ
※2-3、3-3に書いてあります
■自己暗示
自分への執着を手放す暗示の書き換え方法
※2-1、3-1に書いてあります
■過去の傷を癒す
人間不信から立ち直る!過去の傷を癒し信頼関係を結ぶ方法
5.メサイアコンプレックスまとめ
今回は、メサイアコンプレックスについて説明をしました。
実は、心理職についている方はこのメサイアコンプレックスであることが少なくないです。
そして、自分も相手も楽に幸せにできず、劣等感や罪悪感、無価値観にさいなまれて潰れていきます。
相手の役に立てたから自分を楽に幸せにできるのではありません。
自分の悩みを根本から解消し自分を楽に幸せにできた時に、自然と相手の役に立つことができる。
そして、その相手が喜んでいる姿を見て、ほっこり嬉しい気持ちなる。
ただ、それだけの話です。
ぜひ、人の役に立つことや人を救うことを自分のために使わないでもらえたらと思います。
(結果的に、自分のために使うことはできないし)
また、もし心理職に携わっていたりや目指していたりするのであれば、相手を救うことや相手の役に立つことに執着するのではなく、心の底から自分を楽に幸せにしてその姿を見せていく、背中で見せられる人になってもらえたらと思います。
それでは最後までご覧いただきありがとうございました。